2023年6月13日火曜日

チーフスタッフコラム 2023年6月

アフターコロナになり、様々な影響が出てきています。
小学1年生の子たちの滑舌が悪くなっている、立ったまま靴を履けなくて座り込む、マスクを外せない中学生や高校生。
そして、人と会うのが怖くなって、大学に行けなくなっている大学生。

今回は、NHKスペシャル(2023/6/4)「アフターコロナ 人に会うのがツラい~科学で解明!心の異変~」(当法人会長の斎藤環氏も出演していました!)を観て、興味を惹かれたところを紹介したい思います。

興味を持ったのは「急に人に会えない状態になると、人間の脳にどんな変化が起きるのか」という研究です。
これは、長期間ひきこもって人との接触を避けざるを得なかった人達の脳に何が起こっているのか?ではどうすればいいのか?にヒントを与えてくれるのではないかと思いました。

私たちの脳は、そもそもは「孤独・孤立」をとても嫌がります。太古から生存戦略的に孤立していると身を守れずに命を落としかねないからです。
これに関係しているのが、脳にある「報酬系」という喜びを感じる場所です。
ネズミの実験で、隔離を経験したネズミは「他者とつながる喜びを感じにくくなってしまっていた」という結果が報告されていました。
斎藤環氏は、それを受けて、ひきこもっていると益々人と会う喜びがパワーダウンし、今度は、逆に恐怖や不安が増していざ出ようと思っても、外ヘ出られなくなっていくと述べていました。

私が、最も興味深かったのは「脳活動の同期現象」です。引用します。
『私たちの脳の血流量は、その人の脳活動に応じて通常一人ひとりばらばらに変化していますが、一緒に会話をして盛り上がり、お互いの感情が同じように変化すると、それに連動して脳の血流量も似たように変化することが分かっています。これが「脳活動の同期現象」です。脳活動の同期が起きるのは、お互いに「感情を共有」できている状態だと言います。』

「脳活動の同期現象」が起こると、脳が喜び、人と会うことのハードルを低めてくれます。
さらに、リモートではこの脳の同期現象は「何もしないと同じ」くらいに起こらないという実験結果が出ていて、やはり!実際に会うのとリモートでは何かが違う!と思っていたのでとても驚きました。
たわいのないことで思わず笑い合ったりすることが、私たちの脳を喜ばせてくれることは実感としてわかるなあと思います。

では、どうすればいいのか?番組では海外のSEL-社会感情学習を紹介していました。
嬉しかったことや嫌だったことなどをグループの中でみんなに話し、分かち合ったり共感したりする経験をするグループです。

私たちが自身の感情を表現したり、愚痴を言ったりする機会が、コロナ禍でなくても実は以前からとても減っていたように思います。
このようなグループを作らなくても自然にできていた時代もあった・・・でも、あえて「作る」必要性が出てきているのかもしれません。

もちろん、人の脳はそれぞれですので、すべての人に当てはまるものではないでしょう。

でも、茗荷谷クラブで、何か課題に取り組むための「情報交換のコミュニケーション」と、それに伴って出てくる「感情のコミュニケーション」が程よく組み合わさるたわいのない、繕わないおしゃべり…雑談や、ボードゲームやカードゲーム、麻雀などをしながら起きる自然な会話が、少しでも人と会う喜びをもたらし、不安や恐怖を越えて人と会うハードルを下げていけるといいなと思います。

チーフスタッフ 井利由利

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