2022年4月8日金曜日

チーフスタッフのコラム【2022年4月】

新しい年度に入り、別れと出会いの季節となりました。
様々な出会いのある中で、「別れ」もあり、「別れ」はつらいものですが、人生にはつきものですね。

『くまとやまねこ』という絵本があります(湯本香樹実文・酒井駒子絵)。
私は、酒井駒子さんの絵がふわっとしていてなんとも優しく癒されてとても好きです。偶然この絵本を手に取りました。
何度読んでも涙が止まらなくなります。

ある朝、くまはないていました。なかよしのことりが、しんでしまったのです。

から、この物語は始まります。

小鳥が死んで、くまはそっと小鳥を木箱に入れて持ち歩きます。ほかの動物たちは木箱の中の小鳥を見てみんなこういいます。
くまくん、ことりはもうかえってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくちゃ
クマは自分の家のとびらに中から鍵をかけ、ひきこもってしまいます。

ある朝くまはよい天気に誘われて外に出ます。そこでやまねこと出会います。

きみはこのことりと、ほんとうになかがよかったんだね。ことりがしんでずいぶんさびしい思いをしているだろうね
くまはおどろきました。こんなことをいわれたのは、はじめてです。

やまねこはバイオリンをもっていて、「きみとことりのために一曲えんそうさせてください」とバイオリンを弾き始めます。
バイオリンの音色を聞いてくまは、ことりとの思い出をたくさん思い出します。
くまはなにもかもぜんぶ思い出しました。

そしてくまはことりを日の当たる場所にうめて、
ぼく、もうめそめそしないよ。だって、僕とことりはずっとずっと友だちなんだ
と言ってやまねこと旅に出ます。

人には思い出す力があり、そうしている限り、いつでもその人とずっと一緒に居られるのだと思います。


コロナやウクライナでたくさん人が死んでいます。本当に悲しいです。
アガンベンの言葉を紹介した國分功一郎さんの一文を思い出します。引用します。

今、死者たちが葬式もなされぬままに埋葬されている。人々はそれを受け入れ、驚くべきことに教会ですらそれについて何も言わない。しかし、死者が埋葬の権利を持たない社会、死者の権利を踏みにじる社会において、倫理や政治はどうなってしまうのか。そもそも、生存だけを価値として認める社会とはいったいどんな社会であろうか。-アガンベンはこう問いました。」(『コロナ時代の哲学』大澤真幸×國分功一郎より)

死者をきちんと埋葬する…死者の権利を守ることが私たちの生につながっています。
「別れ」の儀式も大切です。


茗荷谷クラブのメンバーの方々がちゃんとお別れの儀式をしてくれました。
色紙いっぱいのみんなの言葉、お別れの品々…どんなに嬉しかったことでしょう!
クラブを辞めていくスタッフへの感謝の気持ちと今後の活躍を祈らずにはいられません。
ありがとうございました!

チーフスタッフ 井利由利

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