2025年2月13日木曜日

「老年期の心理について」~チーフスタッフコラム 2025年2月

文京区では、今年度、「文京区ひきこもり支援センター」を中心に、茗荷谷クラブと多くの関係機関が何度も会議を重ね、『ミドルエイジライフハンドブック』や『親亡き後の心配を安心へ~できることを少しずつ一緒に見つけませんか~』のチラシの配布、そして令和6年9/20の『ぶんきょう区報』ではひきこもり・生きづらさサポート特集号を発行し、「誰もが安心して暮らせる地域のつながりについて一緒に考えませんか?」を発行しました。


私達が目指したのは、地域の方々に対し、ひきこもりへ偏見をなくし、ひきこもっていてもいい、何か私たちにお手伝いできることはないかと思える暖かい地域の文化を醸成していくことです。

2020年からひきこもり支援は39歳を超えて全年齢を対象にしました。特に、8050問題と称される80代のご家族の方や長期・高齢化したひきこもりの方に、支援の手があること、希望を失って欲しくないことをどのようにすれば伝えることができるのかが大きな課題でした。

8050問題に取り組み始めて、まだまだ家族の方やご本人にセルフ・スティグマを持ち、恥の意識がとても強いことを感じてきました。とても難しく、困難を感じています。でもそのなかでも、多くの親御さんとお話しし、教えていただくことも多くあります。

「今から本人が働くことをもう望んではいません」。「ただあの子の人生を想うとどうすればよかったのかと後悔ばかりが浮かんできます」。

まぎれもなく否定的な悔やみ切れない過去、さまざまな挫折、何よりも子どもを自立させることができなかったという深い悲しみや自分自身への怒りを抱えています。

私達に何ができるのだろうか?
訪問する、医療につなぐ、居場所に誘う、他機関と話しをしながらあらゆるリソースを使う・・・。それでもなかなか難しいです。

高齢者の心理の視点から考えてみたいと思います。
老年期において老年者が直面する心理的過程は、何十年と生きてきた自己、現在に生きている自己、そして不確かな未来に生き続けるであろう自己の意味を理解しようとすることです。そのことによって、今までの生活や人生の喪失感と自分自身の今感じる幸福感とのバランスをとる時期であると言われています(エリクソン他1986-1990)。
あるお母様は、亡くなったご主人との思い出のお写真をたくさん持ってきてくださいました。そこには、素敵でダンディなご主人と美しい奥様、そして凛々しい青年がにこやかに笑っていました。そんな過去の楽しい思い出を語りながらご自身を振り返り、「なにか原点に戻れたような気がします。無理せずに自然体で行こうと思います。なんとかなります」と語りました。「せめて私が死んだ後も、あの子が生活していけるように今からできることをします」
そして「お話しを聴いていただいて、本当に助かります。変化はないけど、これからもお話しを聴いていただいていていいんでしょうか?文京区に居て本当に良かったです。安心して暮らせます」と。

自身の人生を語ることによって否定的な意味を持った出来事も、振り返るときの視点の如何によって、肯定的な意味づけがなされることもあり得ます。解決を焦らず、その人その人の人生にゆっくりと寄り添っていければと思います。

何よりも、楽に、穏やかに、暮らしていただきたい、と思います。

チーフスタッフ 井利由利

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