2021年7月9日金曜日

チーフスタッフのコラム【2021年7月】

 先日「オープンダイアローグ」について、斎藤環先生や福祉職の方、ひきこもり当事者の方とお話しをする機会がありました。


その時、福祉職の方が、オープンダイアローグの中でも、最も難しく、印象深いのが「『不確実性に耐える』ことですね!」というお話をしてくださいました。


「オープンダイアローグ」とは文字通り「対話」なのですが、さて対話とは何か?と言えばこれは一朝一夕にはいきません。


特に“支援”という形の中での対話や、何らかの上下関係(親子関係も)が存在している中での対話はちょっと「対話」であることを意識しなければできません。


なぜなら、オープンダイアローグは、結論ありきではなく、もちろん説得、議論、叱責、アドバイスを禁じているからです。


説得、議論、叱責、アドバイスは、モノローグに過ぎず、対話ではないと言われています。


“支援”というと、どうしても問題解決に向かいたくなりますし、結論や、支援計画といった流れに行きやすいし、これまでそうしてきた流れに私たちは慣れているので、これは大きな転換となります。


特に行政機関とのやり取りをしている中で、よく感じることです。


結論や、今後の支援計画をあらかじめ想定しない中での面談とはいったいなんぞや?ということになるかもしれません。


でも実は、私たち心理士は、事前にこちらがプランをもっていたり、こういう面談をしようと目論んでいるときは面談がうまくいかないことを経験上知っています。


私たちは、「クライアント(相談者)こそ最上の道案内人である」というカウンセリングの極意を、いかに信じるかをいつも試されています。


そして、クライアントを最上の道案内にするのには一定の手立て・手法があります。


ノープランで面談に向かうのですから、どうなるのかわからない、この話は一体どこへ向かっていくのかという不確実性に耐えることが必要になります。


考えてみれば、もうすぐオリンピックだというのに、さて無観客なのかどうなのかもわかりません。


この先コロナで世界にどのようになっていくのかも不確実です。


こうした不確実な世界で、生きていくことは容易ではありません。


もやもやして、つらい毎日です。


結論がない対話は、何かを話し合って(議論して)決めようとはしません。白黒を求めないということです。


もやもやした状態で、それでも対話を続けていくと、相談者は、何等かの着地点を自ら見つけていきます。


それはこちらの想定していない思わぬ方向に行っている場合もあります。


おそらく人は、自分で決めたいのだと思います。


人は、人が決めたことに従うがことを嫌います。主体的に生きていきたいと思うのが、人の本性なのだと、多くの人の話を聴いて思います。


内発的動機付けが、外発的動機付けを上回るということでしょう。


内発的動機付けとは、自分の内側から沸き起こるやる気のようなもので、外発的動機付けとは、外からの評価や報酬によって出てくるやる気です。


おそらくこの内発的動機付けは、黙って一人でいても出てくるものではありません。


いろいろな刺激、人から受ける影響を得て、それらを自分の中で温め育てていく中で高まっていくように思います。


そしてそれを育てる大きな力となることの一つが、人との「対話」であり、対話の中での気づきや、確かに自分で決めた、選択したという感覚なのではないでしょうか。


対話の中で人は、自分が本当はどうしたいのかに気づくことができます。そのお手伝いをするためにも、対話は大切です。


カウンセリングとの違いは、「オープンダイアローグ」は、1対1ではなく、複数人で行われるということです。これは大きな違いです。


いろんな人の意見や考え感じ方を聴くことによって、人は、選択肢を広げ、より自分で選択した感覚を得ることができるのですから。


茗荷谷クラブでは、複数の人たちとの「対話」そして1対1の「対話」の両方を補充しあいながら、双方を大切にしていきたいと思います。


茗荷谷クラブチーフスタッフ 井利由利


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